鱗雲

 娘夫婦が何かパソコンの前で作業を繰り返していると思っていたら、新しいホームページが出来上がったらしい。出来上がるまでにそんなに長い日数を要しているようには見えなかったが、僕のものなんかより数段面白そうなのができている。今は素人にでも簡単にできる時代なのだ。僕の新しい方のホームページは、セールスの口車に乗って契約して作ったのだが、あまりの金額の高さにため息ばかりが5年間漏れていた。古い方のホームページを試行錯誤しながら独力で作ってくれた薬剤師に何で契約したのと悪く言われたものだ。今思えば全くあたっている。田舎にある薬局のハンディーを何とか克服しようと当時は思ったのだろうが、あれだけのお金があったら、ハンディーを受け入れてパチンコにでも行けば良かった。  さて、ホームページの活字は読んでいないが写真は見た。そしてしまったと思った。店内の案内に出てくる様子がなんて貧弱なこと。特に一番いけないのが相談机。実はあれは息子が中学校時代に使っていた奴で、邪魔になるから店内で使っている。まことに殺風景で、あれではカリスマ薬局みたいに座って相談しただけで1万円は取れない。余程自信がないと見えてそれらの薬局は調度品で重装備するのだが、僕もせめてもう少しもらった備前焼でも並べていて、カリスマ性を出せば良かった。  漢方の問屋さんが、スタッフの写真も載せるといいですよ、親しみが湧くらしくってと今日教えてくれた。僕の場合、親しみと言うより憎しみが湧くのではないかと思うからそれには乗れない。修正に修正を重ねてくれれば見るに耐えうるかもしれないが、余りにも品がないと漢方薬の効き目に影響してくる。 「持っているもので勝負」などと言うと格好はいいが、実際には「持っていないもので勝負あり」だ。地では僕、空では鱗雲が勇み足。