甲斐性

 言葉を失ったが、そりゃあ自由だし、甲斐性と言えば甲斐性だ。実力がない奴は引っ込んでいろと言われても仕方がない。ただ、僕が40年前にある漢方研究会に入れていただいた条件が、当時のお金で「1日分400円を超えるな」だった。
 それを言ったのは、講師の先生ではなく、熱心に通っていたある漢方問屋の社員だった。薬剤師に交じって一人サラリーマンがなぜか入ることを許されていて、初対面の時、駅まで一緒に歩いたときにそう釘を刺された。
 僕はそれをかたくなに守った。彼は、少しばかり漢方薬をかじると勘違いしてえらくなったりする薬剤師がいることを日本中の薬局にセールスに回って気がついていたのだ。だから、新入りの僕にまずそう、釘を刺してくれたのだ。
 今でも僕はその時の帰り道の風景を覚えていて、よほど印象に残った言葉だったのだろう。その後当然彼の問屋と取引を初めて、恐らく日本で痞える漢方薬としては一番エキスの濃いものを扱うことが出来だした。
 素晴らしい漢方薬と、謙遜な姿勢を彼から学んだが、彼はずいぶんと早く亡くなった。奥さんと別れて一人住まいをしていたが、死後何日か経って発見された。
 僕の粉の漢方薬を飲んでいただいている人は、その湿気やすさに驚くだろう。添加物が少なく煎じ薬に一番近いと言われている。
 だが、その取扱いが不便なゆえに全国的にも取り扱っている薬局は少ないと思うが、ある患者さんが漢方薬を注文してくださったときに以下の話を教えてくれた。
 何県にある薬局か分からないが、体調を相談したみたいだ。病院では治してもらえないと言うか、理解してもらえないようなトラブルを否定されずに、初めてわかってもらえたらしい。そして「治ります」とはっきり言って下さったらしい。相談者は嬉しかったと思う。そして二つの漢方薬を1週間分勧められた。ところが1週間分で何と15000円だそうだ。これはさすがにその方も手が出ない。処方の評価は差し控えるが、そんな高額な漢方薬ってあるのかと言うのが僕の第一印象。そして女性が何を勧められたか教えてくださって、「さすが有名な漢方薬局」と額ずきたくなった。僕はそのまま販売することはないが、当然在庫しているからもし必要なら1日分が250円と300円で販売するだろう。
 亡くなった彼は、そこの薬局は担当していなかったのか。ちなみに最近亡くなられた僕の師匠も「なんであんなに超有名な先生があの値段?先生があの値段なら、僕らはもうただで差し上げなければならない」くらいだった。だから講義の時に出てくる先生の日常のお仕事風景は、聞いているだけで楽しかった。意図しようがすまいが、すべてに嘘がなかったから。虚構も虚栄もなかったから。

衝撃!逮捕者も?自民党安倍派、1億円超の裏金か。パー券ノルマ超えを還流。東京地検が立件視野!与党政治家たちの卑劣な錬金術。元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊 - YouTube