透明人間

 こんなに憔悴しきった表情は、初めて僕の薬局に漢方相談に来られた時以来だ。
 この1年くらいは懸案の頭がふらふらすると言う悩みから解放されていたので、ごくどこにでもいる老人だった。いや、かなり知性っぽいからどこにでもはいないかもしれない。
 いつものように入ってきたから「どうですか?」と尋ねる。いつものように「良くなりましたよ」を期待していたが、今日は違った。いかにも憔悴しているのが伝わって来る。奥さんがうつ病になったのに、漢方薬も含めてあらゆる薬を飲んでくれない。だから先生も手の出しようがない。治療の環境整備がなされないのだから、好転は期待できない。80を過ぎた男性に家事はつらいだろう。
 それが一番の原因かと思っていたら、1週間前にお風呂で転倒してろっ骨を折ったらしい。確かに晒しで固定していた。
 これが一番かと思っていたら、ダークホースがいた。見かけの通り、その年齢でインターネット空間をかなり楽しんでいるみたいだ。ところが上記のように疲れを残したまま過ごしているせいで、クリックしてはいけないものをクリックしたみたいで、大切な情報がすべて消えたみたいだ。外国で暮らしているお子さんたちとのやり取りみたいに実害がないものの他に、具体的には口ごもったが実害もあったみたいで、その修復にかなり神経と時間を使ったみたいだ。その結果が「何か体力がつく薬も煎じ薬の中に混ぜておいてください」になったのだと思う。
 実は僕も昨日、同じような悪意に数時間翻弄されていた。数分おきに延々とメールが入って来るのだ。いかにも関係ないようなものならまだまとめて捨てればいいが、漢方の会社からのメールだから本来大切なものだ。最初はいちいち確認していたが、10分もすればそれが悪意によるものだと分かった。しかし分かっても機械音痴の僕にできることは何もない。ただひたすら頭に来ていたが、延々と頭に来るだけでは解決しないし、体調に良くないので、パソコン業務を依頼している会社に連絡したり、そもそもの漢方の会社にも連絡した。
 すると、僕の薬局だけでなく、その会社と通じている薬局が被害を受けているらしく、数時間後にやっと会社が解決してくれた。
 こういった経験は初めてだったので、被害にあった方の不快さがよく理解できた。外国からのものでしょうと教えられたが、出来れば見つけ出して打ち首獄門にしてほしい。相談相手がいる僕ら事業者ならいざ知らず、現役を引退後、余生を静かに送っている人に同じようなトラブルが起きたのだから、体調を崩しても当たり前だろう。静かに暮らしていても被害に会う。
 痩せて筋肉が落ち、あらゆる動作が緩慢になった人が、不愉快な仕打ちに耐える心の免疫も肉体も持っているはずがない。もし自分のおじいちゃんや親が、或いはおじさんや甥が、同じような目に会ったらどう思うのか。いやいやそんな問いかけで改心するような人間ではないのだろう。透明人間にでもなっているつもりなのだろうから。

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