以心伝心

 以心伝心とはこのことだと、教科書に載せたいくらいのタイミングでその女性が買い物に来た。
 待ちに待っていた備中温羅太鼓のコンサートの案内を代表者の方から葉書で頂いた。チケットを手に入れるには、総社市の文化センターまで行って買うか、チケットぴあで買うかのどちらかだった。えらそうに今チケットぴあと書いたが、僕には何のことか分からなかった。そこでインターネットで検索して、コンビニで買えるチケットだと言うことが分かった。
 総社までの片道1時間半くらいなら、それも和太鼓のチケットを買いに行くためなら、何の負担もない。ただ、コンビニで買えるなら、それも頭にすぐ浮かんだ女性が店長をしているコンビニで買えるなら、こんなに便利なことはない。恐らくタッチパネルを押し続けて発券までに至るのだろうから、一人でやり遂げる自信はないが、手取り足取り教えてもらえるなら不安はない。
 彼女が店にいる時間帯ぎりぎりに訪ねることを約束して、その時間に間に合わせて行ったのだが、駐車場を見て「こりゃだめだ」と思った。普段広い駐車場だなと前を通る時に感じていたが、そのかなりのスペースが埋まっていて、僕が車を止める間にも、出ていく車、入ってくる車でごった返す。
 これではおそらく手取り足取りでは教えてもらえない。出足を完全にくじかれたが、15分くらい車を走らせてきたのだから、買わずに帰るのはもったいない。そこで意を決して店に入ったが、案の定レジに列が出来ていて、彼女はてきぱきと客をさばいていた。普段から「コンビニの店長にうってつけ」と評していたが、まさに現場を見て確信した。多くの客を連続でこなす姿は、薬局などではないので、新鮮だった。忙しいと言うよりも、忙しすぎる光景が何かの映像のように思えた。
  レジ前の行列の傍から「挑戦してみる」とだけ伝えて、自分でやってみた。いつどこで行き詰まるかこわごわだったが、意外とスムーズに運び、名前をカタカナで入力するところで初めて躓いた。試行錯誤していたら、手が一瞬空いたのか後方から彼女がのぞいてくれた。「名前の所まで行っていたらもう大丈夫」と太鼓判を押してくれたが、そのおかげかほどなく躓いたところから脱出できた。今思えばカタカナの大文字と小文字が両方表示されていたのかな?
 最後に引換券が出てきたからそれをレジで待ってくれていた彼女のもとに持って行った。初めてのお使いではないけれどえらい褒めてくれて、確かではないが「新しい自分を発見できましたね」いや「新し力を得られましたね」いや「新しい舞台に立てましたね」いや、まあ、一段ステップアップできたのを褒めるようなことを言ってくれた。機械音痴の僕にはかなり高いハードルだったが、困れば代わりに作業をお願いすると言う約束だったから、ストレスは意外となかった。結構自分でやれたことに満足していたところに、例の誉め言葉。すぐに僕は思った「やっぱり彼女は、セブンイレブンの店長が天職じゃあ!」

 

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