当事者

  いつの間に手なづけたのだろう。高級犬の飼い主たちなのに、ハトの群れまで。
 毎朝歩きながらテニスコートの中を周回していると、隣接している中学校の運動場で犬を3匹離して遊ばせているのが見える。いずれも高級犬のように見える。そのせいかとても落ち着きがありリードを離していても気にはならない。各々がゆっくりとした動作で自由を楽しんでいる。飼い主たちがいずれも老人だからか、犬たちもゆっくりとした動きで、見ていてこちらも癒される。
 最近見慣れた光景が微妙に違ってきた。10羽には満たないと思うが、ハトの群れが犬たちのそばに降り立ち、一緒に遊んでいるのだ。その距離はすごく近い。人間と犬とハトが入り乱れて遊んでいるように見える。少し離れているところから見る僕としては何とものどかな光景で、うらやましいくらいだ。声をかけて仲間に入れてほしいくらいだが、手足の筋肉の弱りを克服することを優先している。
 思えば2週間くらい前から、あのハトたちはテニスコートにも舞い降りてチョコチョコ歩き回っていた。結構僕にも接近を許してくれ2メートルくらいの間隔は安全圏だったみたいだ。そのうちいなくなったと思っていたら最近運動場で見かけるようになった。遠くて詳細は分からないが、おそらく老人たちはエサをやっているのだと思う。フン害のせいでうかつに餌もやれないが、広い運動場だから構わないと思う。遠くから見ているだけでほほえましいのだから、当事者にとってはどれだけ心を癒されるだろう。
 ほとんど行きかう人もいない早朝の校内道路と運動場。誰のものかを忘れさせてくれる管理の緩さに救われる地域の老人たち、犬たち、ハトたち。