長文

 古民家のリホームの冷やかしに行ったときに、担当の男性が僕がわからないことがあるとすぐにスマホで検索してくれ、答えを出してくれた。僕の話を聞きながらも指先は動いているので、答えも早い。便利なものだなあと感心してどういった手段で調べてくれているのか尋ねたらSNSと答えてくれた(ような記憶がある)。画面を時にのぞかせてくれ、店舗にリホームされた実例などを見せてもらった。その時僕が少しだけ違和感を持ったのが、どの写真に対してもコメントがいかにも短いことだった。かわいい器を商売にしているところ、美味しい料理やスイーツを売りにしているところ、文化を売りにしているところ、どの画面も短いコメントだけだ。僕はそうしたものを見て一瞬は感激することはあるが、二舜はもう斜に構える。信頼しきると言うことはない。視覚だけで評価するのは甘い。何か訴えてくる知性や信頼感がない限り、僕は信用しない。
 こんなことを考えていたら、ある大学の先生が、長文を読む習慣が現代人にはないから偽情報をつかまされるのだと新聞に投稿していた。確かにSNSなどは、昔の新聞の見出し程度を読んでいるようなものだ。それでは自分の心地よいタイトルだけを受け入れて、せっかくの知識をブロッキングしてしまう。そんな人間が増殖しているのだから、ある階級の人間、例えばカルタや汚泉にとっては支配が容易になり喜ばしい限りだろう。センセーショナルな見出しさえつけていれば、国民も首から上のない生き物の集団でしかない。体温のあるロボットだ。
 あえて長文を読む。そんな努力が必要で、一億家畜化されないためには大きな武器になるだろう。失った習慣を取り戻すのは困難だが、家畜になるよりはましだ。

お言葉に甘えて読んでいただきたい長文を下記にコピーしました。皮肉なことに長文でもアホコミが信用できない理由が書いてある。

フリー記者を排除し、事前通告された質問と再質問禁止。これが罷り通るのが日本の政治報道の現実
 ハーバー・ビジネス・オンライン 2021/01/16 08:33
 前回、1月7日の菅義偉首相による会見を例に、その「茶番劇」ぶりを解説した。今回はさらにその異常性を指摘していきたい。
記者クラブ勢を排除した、安倍「桜を見る会」疑惑会見
安倍晋三衆院議員(前首相)が昨年12月24日に急遽開催した記者会見も、海外では記者会見と呼べる内容ではなかった。「桜を見る会」事件で、東京地検特捜部が同日、安倍氏を不起訴(嫌疑不十分)処分とし、配川博之公設第一秘書を略式起訴。これを受けて、東京簡裁が罰金100万円の略式命令を出した。これについての会見は衆院第一議員会館のいちばん狭い会議室で開かれ、参加できる記者は自民党記者クラブ(正式名・平河クラブ)の常勤社各社1人(16人)と非常勤社8人(抽選)の計24人に限定された。つまり、安倍事務所と平河クラブの談合での会見だったのだ。安倍事務所は会見の案内文をクラブに送っている。その内容は「クラブ以外の記者を入れるな」という命令だった。会見の司会は、安倍第二次政権で首相会見を司会していた長谷川榮一氏(安倍退任で内閣広報官を退職、元経産官僚)が務めた。常勤社の京都新聞の記者が「平河クラブだけではなく、もっと開かれた広い会場で会見をすべきだったのでは」と聞いたが、安倍氏は答えなかった。
 長谷川氏は官邸での会見と同じように「一人一問」と制限をつけて、記者を指名して質疑応答を仕切った。記者の追及は甘かった。長谷川氏が「会議室は7時まで借りている」と何度も言って、午後7時5分に会見は終わった。一議員の会見を、クラブ以外の記者を排除する閉鎖的な条件で実施することを許した平河クラブの責任は重い。記者クラブ制度がある限り、まともな記者会見はできないことがまた明らかになった。
質問の事前通告や再質問自粛こそ「報道倫理違反」
ここで、官邸での首相の記者会見の仕組みを見てみよう。官邸報道室は1月7日の会見前、官邸ウェブサイトに「新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見への参加について」と題した通知文を載せている。こうした通知文が載ったのは菅政権になって初めてのことだ。
通知文にあるように、参加資格があるのは①日本専門新聞協会会員社に所属する記者(国会記者記章の保持者)②日本雑誌協会会員社に所属する記者(国会記者記章の保持者)③外務省が発行する外国記者登録証の保持者④日本インターネット報道協会法人会員社に所属する記者で、十分な活動実績・実態を有する者⑤上記1、2、4の企業又は日本新聞協会加盟社が発行する媒体に署名記事等を提供し、十分な活動実績・実態を有する者――に限られる。
 参加希望者は、事前登録及び入邸登録のための手続きが必要となる。④⑤に該当し、2010年3月26日以降の首相会見に参加している者は毎回、報道室へ申込票を提出しなければならない。通知文の「留意事項」にはこう書いてある。
<いわゆる3つの「密」を避けるため、会見室においてはペン記者は各社1ペンでお願いします。また、ペン記者は事前登録を行った方のうち抽選に当選した方のみ御参加いただきます。1月4日の会見で当選した社・方以外の社・方を優先します。(略)参加者は、報道倫理を厳守するとともに、官邸職員の指示に従ってください。官邸職員の指示に従わない場合等には、退出していただくこともあります>
ここでいう「ペン」はカメラマンではない普通の記者という意味だ。官邸の側が記者に「報道倫理を厳守する」ことを要請するというのには笑ってしまう。記者が会見前に取材対象者に質問事項を伝えたり、再質問を自粛したりすることこそ報道倫理違反と言えるだろう。
安倍・菅政権になって記者会見参加を認められたフリー記者は皆無
最初の緊急事態宣言のあった昨年4月7日以降、首相会見に参加できるのは内閣記者会常勤幹事社19社の各1人と、非常勤社から抽選で選ばれる2人、②~⑤の各分野から各2人を抽選で選んだ8人の計29人だけに限定されている。官邸の首相、官房長官の会見にフリーランスが自由に参加できると誤解している人が多いが、会見に参加できるのは報道室に登録している11人だけだ。畠山理仁氏によると、11人は畠山氏のほか、岩上安身、神保哲生江川紹子、安積明子、大川豊村上隆保、島田健弘、細川珠代、田中龍作、上杉隆の各氏。
この11人はすべて民主党政権時代の2012年に登録されたフリーランス記者で、安倍・菅政権で新たに認められたフリーはいない。フリーの寺澤有氏は参加を拒否されている。神保・田中両氏は「インターネット報道協会」の枠で登録されている。コロナ以降、「政党の役職者、政党機関紙の記者」は参加できないという制限が加わったので、「NHKから国民を守る党」幹事長の上杉氏は参加できなくなっている。
 内閣記者会を運営しているのは、常勤幹事社19社(朝日新聞毎日新聞、読売新聞、日経新聞産経新聞東京新聞北海道新聞西日本新聞京都新聞中国新聞ジャパンタイムズ共同通信時事通信NHK日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日テレビ東京)。常勤幹事社19社を含む正会員は102社・353名(常勤会員と非常勤会員)で、オブザーバー会員は82社・174名(常勤会員と非常勤会員)だ。
内閣記者会(永田クラブ)には規約がある。1957年に制定され、7回改正されている。最後の改正は2001年だ。筆者は内閣記者会の規約を入手し、ブログ「浅野健一のメディア批評」にアップしている。日本に約800ある記者クラブでこの規約を公開しているところはない。
記者クラブ」に内在する差別構造
筆者のブログには、日本新聞協会編集委員会の公式見解(2002年1月17日)などの資料のほか、『記者クラブ解体新書』(現代人文社)を書くために実施した官庁と報道各社への調査結果なども載せている。
内閣記者会の規約(1957年、7回改正で最後の改正は2001年)によると、クラブは「内閣など、当クラブの取材範囲にある政府機関の取材の便宜と会員相互の親睦をはかることを目的」とし、会員資格は「日本新聞協会に加盟している新聞、通信社および放送機関の記者で、内閣などを担当するものとする」と定めている。
会員は、常勤会員と非常勤会員で構成され、これとは別に「オブザーバー会員の加入も認めることができる」としている。オブザーバー会員は「原則として、日本新聞協会に加盟している新聞通信社と特約関係をもつ報道機関の記者」だが、「雑誌、週刊誌、政府、政党、労組等の機関紙、業界紙などの記者の加入は認めない」「外国の新聞、通信、放送関係社で、日本新聞協会加盟社と同様の新聞通信活動を行っている記者の加入を認めることができる」としていて、以下のような規約が書かれている。
「新たに会員として加入しようとする社は(オブザーバー会員を含む)すでに加入している常勤会員社の二社以上の推薦を受けた入会申込書に入会者名を記して幹事に提出し、総会の承認を得なければならない」「クラブは、取材上の便宜のため、記者会見などを主催する。クラブ主催などの記者会見は、原則として、会員以外のものの出席を認めない」「常勤会員は、日常、首相官邸などのクラブ室と、その備品を使用することができる。非常勤会員とオブザーバー会員は、クラブの電話使用を除いて、その便宜が制限される」
運営は官邸報道室に丸投げの実態
 記者クラブの会費は、会員1名について月額600円とある。新聞協会編集委員会の「見解」によると、記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される「取材・報道のための自主的な組織」で、「記者クラブは国民の『知る権利』と密接にかかわる」としている。
新聞協会編集委員会の「見解」は、記者会見について次のように書いている。
記者クラブは、公権力の行使を監視するとともに、公的機関に真の情報公開を求めていく社会的責務を負っています」
記者クラブが主催して行うものの一つに、記者会見があります。公的機関が主催する会見を一律に否定するものではないが、運営などが公的機関の一方的判断によって左右されてしまう危険性をはらんでいます。その意味で、記者会見を記者クラブが主催するのは重要なことです。記者クラブは国民の知る権利に応えるために、記者会見を取材の場として積極的に活用すべきです」
その建前は「記者会が会見を運営する」としているが、実際は官邸報道室に丸投げしている。参加資格の決定も、実務上は「すべて報道室がやっている」(在京紙記者)のだ。
記者クラブを解体・廃止しなければ、国際標準の会見はできない
菅首相日本学術会議の会員の選考方法が「会員などの推薦制で、偏っていて多様性に欠ける」と批判し、「既得権益だ」とまで批判している。しかし、自身の足元の「内閣記者会」のメンバーの選任こそ悪しき前例の踏襲、既得権益そのものではないか。
安倍前首相はコロナ禍に関して計9回会見を開いた。昨年2月29日の会見の一方的な打ち切りに江川氏が「まだ質問があります」と抗議したことで、3月14日からフリー記者枠の記者の質問が認められた。安倍首相会見で、フリーが7年半で初めて質問ができたと評価する向きがあったが、筆者は「記者クラブの廃止なしに、首相会見のオープン化は絶対に実現しない」と言ってきた。
記者クラブ制度を解体・廃止し、海外諸国と長野県庁・鎌倉市役所にある広報(メディア)センターを設置することによって、日本の首相「記者会見」も国際標準に達するはずだ。次期衆院選で「記者クラブ」廃止の是非が争点の一つとなることを期待したい。
浅野健一】あさのけんいち●ジャーナリスト、元同志社大学大学院教授