恵み

 なんて穏やかでよい日だったのだろう。恐怖で空ばかり見上げているだろう九州や飛騨地方の方には申し訳ないが、何十日ぶりに薬を飲まなくて仕事ができた日だった。もっとも昨日は応援薬剤師のおかげで飲まなくて済んだのだが、自力で仕事をした日で飲まなかったのは本当に久しぶりだった。特にこの1か月近くはいわゆる牛黄を飲まなければ失神しそうだったから、本来は僕もまだ体力があるじゃないかと気づきをもらった。
 今日は二つ良いことがあった。一つは、過敏性腸症候群を発症してまだ1週間の少年に1時間かけて手紙が書けたこと。僕の場合、こんなに発症後短期間で来てくれる人は地元の人以外にはまずいない。数か月から数十年が相場だ。今なら簡単に治せられると思ったので、薬よりも早く効きそうだったので、思いをつづった。よい仕事ができたような気がする。
 もう一つは、漢方薬を取りに来たのだけれど、僕の体調を心配して白十字のワッフルなど、それも結構たくさん持って訪ねてくれた女性があったこと。僕は勝手に娘みたいに思っているが、その女性としっかり話ができた。それもいつものように多くの笑いを伴って。
 こうしてしばしの休養をもらえればすぐに復活できるのではないかと今日は手ごたえを感じた。「お役に立ってなんぼ」の世界はやはり僕は好きだ。体力のなさを恨めしく思うが、多くの懸命に生きている人たちとつながることができるのは、初老の僕には大きな恵みなのかもしれない。