加川良、友部正人

 連休中、時間を持て余していた。そんなときにふとしたきっかけで、ユーチューブで加川良友部正人のライブ映像に行きついた。
 学生時代の彼らは僕にとって、いや僕たちにとってはヒーローであったし、別世界の人で近寄りがたい人たちだった。それでも、なけなしのお金を払ってコンサートにも行ったし、学園祭に呼んだりもした。薬科大学で当時フォークソングを歌うような人間は少なかったので漁夫の利を得て前座を務めたが、それはもう実力は段違いで、若気の至りでしかなかった。
 当時、レコードはほとんど無理をして買った。食費はなかったけれど、たばこ代とレコード代とパチンコ代はあった。今思えばすべてが自爆テロだった。
 二人の歌も決して生きる勇気を与えられるものではなかった。むしろ自爆テロにお墨付きをもらうようなもので、レコードを聴くたびに、そしてそれをまねて歌うたびに道から外れて行った。ただしその道は、僕には輝いているようには見えなかったし、歩きたい道でもなかった。
 何の力が働いたのか、何が引き留めてくれたのか、自爆のスイッチは入れずに済んだが、テロ犯の心情はいつまでも僕の体臭となって離れようとはしない。一見まっとうな道に見えるけれど、僕が歩いて来たのは、並行して走っている所詮あぜ道だ。舗装された道は何となく歩きづらい。
 加川良はすでに亡くなり、友部正人も恐らくもう70歳。60歳ごろのものしかユーチューブにはなかったが、当時のように眼光が鋭い。めちゃくちゃ歌がうまかった加川良、詩人かと思うくらいの友部正人。その道を全うしたのだと、当時を思い出して驚いた。だって、当時、歌は若者の特権くらいにしか思えなかった時代で、こんなに老人になるまで多くの歌手が歌えるなんて思ってもみなかった。僕の友人がしばしば口に出す「心は二十歳、体は八十」がよくわかる。