裏目

 いまや第2の故郷になっている香川県の丸亀に第九を聴きに行ってきた。午前中、琴平宮にベトナム人を案内したのが裏目(例によって写真とりまくり)に出て、やや遅れてしまったのだが、会場に入ると前から5列くらいがほとんど空席だった。ラッキーと思って3列目に席を取ったのだが実はこれもまた裏目だった。
 と言うのは、舞台から人が通れるくらいの隙間が無い所から席が作られているものだから、3列目といっても、結構近い。そして演奏者が入場してから分かったのだが、前のほうの演奏者、ほとんど弦楽器だが、彼らの姿でその後の演奏者が見えないのだ。管楽器はほとんど見えなかった。おまけにソリストの4人も顔しか見えなかった。カーテンコールで登場してからこんなに艶やかな衣装だったのかと分かったくらいだ。さすがに地元の人はよく知っている。まるで指定席かと思わせるくらい人が腰掛けていなかった。
 それはさておいて、さほど大きくない丸亀市で、自前の楽団と、自前の合唱団で12年も第九をやっていることを今日知った。第1次世界大戦中に中国の青島で捕虜になった324人のドイツ兵が、捕虜収容所であった丸亀市本願寺で2年を過ごし、収容所で楽団を結成し演奏会をしていたらしくて、その時に演奏されたのがどうやら第九らしい。だから丸亀市は第九の源流のまちを名乗り、その歴史的史実を後世に伝えようとしているみたいだ。だから街の規模を越える催し物が継続されているのだと思う。会場のアイレックスは決して音響が良いとは素人の僕でも思えないが、かぶりつきの視線に飛び込んできた演奏者のひたむきな姿には心を打たれる。
 今日もよき日なり。