評価

 台風が連れ去った雲のおかげで、夜でも晴れているのがよくわかる。なんと皮肉なのだろう、満月に近い清らかな月が、テニスコートを歩く僕の影を作る。半袖では寒く感じるくらい空気も澄んでいる。何もなければ自然に包まれる秋の素晴らしい夜だ。
 ただ、甲信越や関東、東北の方々、台風の被害を受けられた方々には、月を見上げる余裕もない。懸命に働いて築いてきた財産や思い出の多くを失った。命まで落とした方も多い。いつものように僕らと同じ田舎に住む人たちが多く犠牲になった。自然の懐で生きることは、その牙にも襲われるってことなのか。アホコミはあほの一つ覚えのように避難を呼びかけるが、その時間にもスポンサー様にだけは配慮を欠かさない。
 数日前から、東京の被害ばかりをテーマにして放送が流れていた。大都会は災害に強いことは分かっているから、何でそんなに東京ばかりを取り上げるのだろうと不快に思っていた。所詮スポンサー様に対する売込みだから、センセーショナルなほうがいいのだろう。
 ふたを開けてみるとまたまた「やはり」なのだ。やはり、自然がまだいっぱい残っているところが犠牲者になっている。気丈にインタビューに答える人たちに染み付いた土着の人特有の純朴さに余計胸が痛む。都市部の被害が軽微だったことでまたまた、汚部を始めとする政治屋は、己や仲間たちの利益のためにしか心を動かさないだろう。多くを失ったその土地の方々はやつらをどう評価するのだろう。