ニュースを見ていて素朴な疑問を持った。僕らが幼い時に泳ぎに行くのは海水浴場か近所の海だった。海水浴場はさすがに砂浜だが、近所の海は岸壁だから真下でも水深が何メートルもある。石段以外に足場は無い。船が係留されていて、船からも飛び込んだりしていた。これが小学高学年の夏休みの光景だといったら信じられないかもしれない。
 もちろん親に連れられて海に行ったりしない。小学高学年の子供が低学年を連れて行く。10人くらいで行動していたように思う。全く泳げない子供を6年生が連れて行っていたのだ。子供も当たり前、親も当たり前の今から思えば「とんでもない」光景だ。
 そんな元海の子にとって昨日のとしまえんの事故は、それこそ信じられない光景なのだ。と言うのは、全く大人の目が無いところでも、子供同士の掟があった。それはいかだの上では遊ばない。船の下を潜らないの2つだ。どちらもいかだや船底に張り付いて動けなくなるからと言う理由だった。確かめたことが無いから実際にどうなるのかいまだ分からないのだが、背中が張り付いて動けなくなるという言い伝えは、かなりの恐怖感を与えてくれた。だから好奇心はあったが決して一度もその掟を確かめたことは無い。もっともこの掟は、かつての犠牲者の不幸があってできたもので、いかだの上で遊んでいた隣町の子が、木の間から落ちて亡くなったことなどが影響している。
 ニュースを見ていてすぐに浮かんだ違和感は、背中が引っ付いて動けなくなるいかだや船底と同じような構造の遊具だ。確かにいかだでもないし船の底でもないが、同じ理屈だと思う。ましてライフジャケットみたいなものを着ていたら、ただでさえ浮かぼうとして潜ることができないからなおさら脱出しにくいだろう。
 50年以上前の子供の掟を持ち出して想像力を逞しくするのは失礼かもしれないが、大都会の有名な娯楽施設で起こった不幸に、半世紀以上前の子供の掟が役に立つならと思って書いてみた。