上には上

 上には上がいるものだ。和太鼓のコンサートに行った数は相当なものになる。もうこれ以上上手なチームはないだろうと感激しながら帰ったことが何度もある。ただ、それが簡単に破られることがある。今日が正にそのケースだ。最高だと思っていたものが最高でなくなる、そんな経験ができるのは幸せなことだろう。  第9回日本縦断和太鼓コンサートが倉敷であった。パンフレットに載っている石川県の御陣乗太鼓と倉敷天領太鼓以外は実際に聴いたことはなかった。知名度からし舞太鼓あすか組を一番聴きたかった。実際の舞台は想像を絶する迫力の演奏で、さすが海外公演が多いチームだけあって、演奏とパフォーマンスがとても充実していた。  今まで僕が聴いた中で最高のチームは・・・言えないが、舞太鼓あすか組が今日そのチームを軽々と越えたような気がした。筋骨たくましい若者達が力の限り打ち込む姿は美しい。全く乱れない音が僕の内臓まで揺らす。鍛えると人間はここまでできるようになるのかと驚くばかりだ。何も極めることなく平々凡々と暮らしてきたから、彼らの雄姿が余計にまぶしい。  今インターネットで調べると舞太鼓あすか組は奈良県のチームらしい。関西を中心に活動しているからもうこうなったら、大阪や神戸のコンサートに行ってやろうかと思ったりする。薬局に来る人の中にも大阪にコンサートを聴きに行く人は何人かいる。わざわざ高い新幹線代を払ってと思うが、本人にとっては恐らく大きな価値があるのだろう。僕が和太鼓に惹かれるのと同じように。  上には上、こと太鼓だけでなく、あらゆる分野で遭遇する出来事だ。そのことを経験するたびに自分のことを下には下と言い聞かせて謙遜にならなければ、和太鼓追っかけの名が廃る。