三段跳び

 例のラブラドールの〇ちゃんに会う絶対条件は、飼い主のお父さんを絶対治すことだった。漢方薬の効果を2週間で感じてもらえなければ恐らく再来店しないから、気合が入っていた。もっとも、大学病院での診断により、その病気に薬がないように言われていたので手ごわいとは思ったが、問診により沢山ヒントがあったので漢方薬なら解決できると自信もあった。案の定、結構効果があって、症状によっては2週間で苦痛が半減していた。だから又〇ちゃんと再会できた。  2回目ともなるともう、薬局が安心出来る場所と認識するみたいで、随分と落ち着いて相談机のそばまでやって来て腰を下ろした。床に頭を付けたままの上目遣いの視線と合ってしまった。この視線がなんともいえない。あまりの頭の大きさに、つい人格化してしまい、心の中が見えそうだ。巨大ぬいぐるみよろしく、抱っこしたり、頭のうえに顔を載せたりして写真を撮ってもらった。  娘が「大型犬の魅力を知ってしまった」とけだし名言を吐いていたが、ところでこんなに大きな犬を飼う資格って何なのだろう。何が揃っていなければ飼えないのか。〇チャンが帰ってから思った。単純に考えると、体に見合った家の大きさ。餌代がまかなえるだけの経済力。運動をしてやらなければならないから、広い庭。散歩に付き合える体力と時間。そして何よりも好きなこと。奥さんは大型犬が好きなんですと言っていた。代々大型犬らしい。  次回来られたときに尋ねてみたいが、我が家は庭のない家のつくりで、1時間近く歩かせてあげる時間も体力もない。何も条件が要らないミニチュアダックスからは三段跳び選手くらいにならなければ資格が手に入らなそうだ。