濃度

 今は亡き、ある漢方問屋のセールスからの助言を守り続けていて良かったとつくづく思った。その助言に素直に耳を貸していなければ、今頃僕はこうして漢方薬の仕事が出来てはいない。  今僕が事務方のお世話をさせていただいている漢方の研究会に入会させてもらったときに、既に勉強をしていたそのセールスが、〇〇〇の製品を使うなら入れてあげないといった。理由は、せっかく先生から素晴らしい処方を教えていただいても、〇〇〇の漢方薬を患者さんに飲ませたら効かない可能性があるから、絶対使わないことを約束してくれと言われた。勿論僕は、勉強したいから約束は律儀に守ったし、田舎の顔が分かる患者さんに飲ませるのだから、効果があるのは必須条件だった。それ以来、僕は主に〇〇の漢方薬を使い続けている。ただ世の中は相変わらず9割くらいの割合で〇〇〇の漢方薬が使われている。  数日前、台湾に漢方薬の材料につい交渉に出かけた人が昨日やってきて、色々な土産話しを聞くことができた。 その中で特に印象深かったのが、やはり僕が拘って使ってきた台湾の会社の漢方薬の質の良さだ。まず濃度が濃い。そしていらぬものが入っていない。マイナス面はその分吸湿性に優れ、湿気やすいということだが、効果が無ければ何の意味も無いから、やはり僕は管理しづらいが良く効く〇〇の漢方薬を使う。  台湾は日本よりずいぶんと漢方薬に関しては進んでいて、例えば、エキス剤を作るときの濃度を如何に上げるかの研究に余念がない。現在台湾で最も抽出率が高い〇〇の製品で、1日あたりの煎じ薬から作られるエキスの量は1.6gらしい。と言うことは日本のものはそれより少ないということだ。日本の有名メーカーのデータも分析していて、その数値は恥ずかしくなるようなものだ。日本の超有名な会社の漢方薬の1日量は7.5gだから、如何に添加物だらけかってことが分かる。80%は薬ではないってことだ。その上、日本の病院で使う漢方薬の値段は、成分だけの量ではなく、添加物の量も含めて計算してくれるらしいから、途方も無く儲ける。役所も企業には甘いものだ。  同じ薬を出しても効果が在るのと無いのとの違いが数字ではっきりと理解できた。若くして亡くなった先輩達の助言に感謝だ。