案内状

「ジガク」「ジガク」と言う単語が飛び交うのだが、何の意味か分からないから話についていけなかった。年中行事の牛窓北小学校の保健委員会でのことだ。何でもそのジガクとやらで、児童に負担がかかり、宿題や遊びの時間がとられて良し悪しだという親の意見だった。僕はもちろん、医師も歯科医師も助言を目的で招かれているのだが、飛び交う言葉についていけないようでは存在意義がない。そこで僕がその「ジガク」たるものが何か尋ねてみた。すると出席していた先生が教えてくれた。ジガクとは自学という字を当てるそうで、なんでも自分でテーマを決めて家で勉強をすることらしい。多くの児童が宿題に時間をとられ、その上になお自分で決めたテーマについて調べなければならないから、大変なんだそうだ。ある子はその自学を熱心にやるし、ある子は限界説を唱えて旨く距離をとっているらしい。  出席していた医師は、大学院で教えていたときに、何を勉強していいかわからない若い医師が多くて困ったから、そうして積極的に勉強する習慣をつけさせることは必要だと意見を述べていた。僕は、むしろ逆で、「多くの若者から、健康や人生相談みたいなのを受ける機会が多いけれど、気になるのは頑張らなかった人よりも、頑張った人のほうだ。児童が自学とやらに負担を感じているのなら、距離を保つのも必要。頑張った子が負担に耐えれなくなったときに起こすのがジガクテロだ」と答えた。  来年はきっと僕には案内状が届かないだろう。