実験

 朝鮮ガンマン第二弾。不思議な体験をした。そしてその呪縛から今日も抜けなくて、不愉快な思いをしながら見ていた。我こそはと思う方は是非挑戦してその不思議な誘惑に打ち勝って欲しい。  ますます面白くなって、今日など2時に早くスタッフが食事を終えて降りてきて欲しいくらいだった。じっと耐えて待っていたが、2時を少し過ぎてしまった。  自分でも理由が分からない。ドラマにひきつけられるにしたがって本気で字幕を読むようになった。偶然その番組を見つけた頃はほとんど集中していなかったから、字幕は読んだり読まなかったりで食事に集中していた。すばやく食事を済ませ、階下に降りることが優先だった。ところが内容が少しずつ分かり面白くなると、一言も漏らすまいと懸命に字幕を追うようになった。ところが何日目だろう、ふと気がついたのだ。その番組は日本語で放送されていたのだ。そのことに気がつくまで僕は数日を要した。韓国ドラマをNHKで追っかけてきた僕は、ヨン様のときから全て字幕だったような気がする。はっきりと覚えているわけではないが、しっかりと字幕鑑賞がインプットされていたのではと思われる。だから自然に字幕を追っていたのだと思う。  ところが、それからが結構苦行なのだ。日本語吹き替えでやっているとわかっているのに、どうしても字幕を読んでしまうのだ。そしてその時は吹き替えの言葉を全くブロックして聞こえない。何語で喋っているのだろうと言うくらいほとんど意味を持っていないのだ。これではダメだと思い、いや少し恐ろしくなって、懸命に字幕に抵抗するがすぐに引き戻される。もう数日僕はこんな葛藤を抱えながらドラマを見ている。  そのことを昨日妻に話してみた。「字幕を読んでいる?このドラマ日本語よ」と。すると妻は「本当だ、びっくり!」と言った。妻は韓国ドラマを見ることはないが、やはり字幕のトリックには引っかかるのだ。僕だけでないことが分かりほっとしたが、盲点ってあるものだ。誰もが共通して陥るブラックホールってあるんだと実感した。テレビで脳の働きを検証するような番組があるが、日常にもそうした状況は転がっているのだ。脳の優れたところか頼りないところか分からないが、とんだ実験が出来た。