得意技

 食卓を囲んで楽しく4人で話していた。すると次女が突然悩みを打ち明けた。なんでも三女は得意なことがあるのに自分にはないと言う悩みだった。確かに三女は初来日2年でかなり日本語をマスターした。再来日の次女にそんなに劣らない。おまけに三女は以前国で勤めていた会社の社長がシンガポール人だったおかげで英語も堪能だ。どうにか3ヶ国語を操れる。その語学の習得の才能を評価しているのだ。  悩んでいる次女を見かねて三女が言った。「Gはコミュニケーションが得意」と。僕も次女の超得意技を以前から感じていたので、似たようなことを言った。「Gは得意なことがあるじゃないの。人にお願いすることが得意じゃないの」と。すると三女は体をのけぞらせながら「そうそう、それそれ、そのコミュニケーション」と大声で笑った。恐らく同じことを感じていたのだろう。その恩恵をかなり三女も受けているから。  「お父さんは、Gのお願い事を全部かなえてあげたじゃないの。5年前に日本にいるときは、日曜日になると『オトウサン ヒマデッカ?』って電話をよくしてきたじゃないの。お父さんは忙しくても暇と答えて何処にでも連れて行ってあげたし、日本に戻ってきたらアパートも探したし、アルバイトも探したし、滞在許可の保証人にもなったし、先月からはお父さんの家に一緒に住むようになったし、お母さんは2人の為にせっせと食事を作っているし・・・こんなに何もかも希望をかなえてくれる人がいる?Gの才能だよ。自信を持って。Gはいつも遠まわしに言うけれど、なんとなく希望をかなえようと相手がしてしまうのはGの人柄なんだよ」  次女も三女も口をそろえて、日本で頑張って国の身の回りの人をまず助けたいと言う。2人とも生活に困窮している身内がかなりいて、その人たちから先ず手助けをし、いずれは多くの人を助けしたいと言う。狭くて寒いアパートで1日何食の食事で済ませていたのか分からないが、まず健康を保証し、勉強ができる環境を整え、夢に近づけるようにしてあげたい。  僕も妻も2度目の子育てだが、1度目に劣らぬようにしなければならないと思っている。