試練

 食事中と言うのに、次女と三女が真剣に悩んでいる。理由を聞くと、冬休みが後二日しかないのに、宿題がそれぞれ残っているそうだ。その中で、2つは何とか出来そうなのだが、残り1つが問題なのだそうだ。未提出だと困りそうだから何か手伝えることはないかと尋ねてみた。すると二人が「この宿題だけは出来ないです」と声をそろえて言うので、それでは保証人の僕としては困るので、もう1度聞き直した。  すると、どうしてもできない宿題がわかった。それは紙おむつを実際に付けてみて、その感想を書くことなのだそうだ。その紙おむつは学校から支給されているからそんなに難しくなさそうなので、「紙おむつを持っているなら数分で済むことではないの」と急かした。すると、紙おむつをつけて実際におしっこをしてみることなのだそうだ。なるほどそれならハードルは少し高い。失敗してはいけないので「うちで売っている物を貸してあげるわ」と提案すると「お父さん、その紙パンツをはいてスーパーで買い物をしなければならないんですよ」と大声で笑い始めた。なるほどそれはハードルをかなりの高さに上げてしまう。若くて美しい二人が、尿をしみこませた紙パンツをはいてスーパーに出かけるのはかなりの勇気と、介護を受けている人への尊厳が必要だ。そのどちらかが欠けても出来ないだろう。  介護を志す若者達がこんな試練をくぐって、現場に立っているとは思わなかった。「あと20年くらい待ってくれればお父さんが実際にして感想を書いてあげる」と言うと「お父さんは、いつまでも元気でいてください」と言ってくれた。家族以上の家族だ。