お土産

 僕の手元に届いたときには既に箱は開けられ、一つは誰かの口に入っていたみたいだから、どこで買ってくれたお土産か分からなかった。そもそも彼女が何処で開催されるコンサートに行ったのかも知らない。ただ、今までの経験であまり鳥取県とか島根県に彼女が出かけて行った話は聞かないから、恐らく、神戸、大阪、福岡、いや場合によっては名古屋や東京まで行ったのかもしれない。そのくらい熱狂的なファンなのだ。  行く前に新幹線に1人で乗るのは初めてだから不安だと言っていたが、こうしてお土産が届くと言うことは見事行ってこれたってことだろう。聞く所によるとコンサートではお土産がつくらしいから、ひょっとしたら頂いたスイーツがお土産だったのかもしれない。だがそんな貴重なものを手放すとは考えにくい。ましてそんなもの僕が食べたりしたらほとんど共食いだ。  仕事や家事で一杯一杯の女性が、心を解放する為に、年に一度や二度彼のコンサートに出かけるのも悪くはない。コンサートから帰った後御主人を見て疲れがどっと出るというリスクはあるが、日々の頑張りのモチベーションを維持する源になるのなら健全なものだ。まだ若いから、僕みたいに来年まで生きてまたこの和太鼓を聴きたいというのとは若干違うが、気持ちが正のほうに振れるのは共通だろう。音楽の持つ一面だろう。  これからその女性にお礼のメールを送ろうと思っているのだが、あれだけ話をしているのに顔が思い出せない。確か吹石一恵似だったと思うのだが。