業界

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのFrits Holleman氏らは、1993年から2013年までの血糖降下薬に関する論文の執筆者が、どの程度論文を量産しているかについて、PubMedで検索した。 血糖降下薬に関するRCTは、2001年には70論文だったのが、2013年には566論文と急激に増加した。1万3,592人の著者による論文(3,782本)のうち、論文多産トップ110人の執筆者だけで991本のRCT論文を出版しており、1人当たり中央値20本の論文に関わっていた。 そのうち、906本(91%)はスポンサー付きであった。しかも、110人のうち48人は製薬会社と雇用関係にあったという。そして、実はその439本(44%)は医学ライターにより執筆されており、そのうち204本はスポンサーが提供したライターであったという。 トップ11(10位は2人)の執筆者だけでみると、354本のRCT論文を発表しており、1人あたり42本に関わっていたというから、ものすごいエネルギーである。わが国でもRCT論文に関わることが大きな業績とされるようだが、企業とは一線を画した研究者は非常に少ないように思う。 著者らが、利益相反の面から検討した結果、企業とは独立した内容と考えられたのはたった42本(6%)にすぎないというから、RCT論文の3分の1は、製薬会社社員とお抱え医師によって執筆されていたというのは、いかにこの領域のRCTが企業誘導型であるかを如実に表している。高血圧や高脂血症治療薬をはじめ、ほかの領域でもおそらく同様であろう。

  一事が万事この有様なのだろう。天下り希望の役人と製薬会社が組めば、1のものが2にも3にもなる。正に薬九層倍を地で行っているようなものだ。洗脳され続けているこの国の人間は、権威に全くもって弱いからすぐに信じる。盲信とはこのことで、こと薬に限ったことではない。巨額の利益を上げることができる製薬企業に、障壁となるものはない。好き勝手だ。税金に群がるというより、税金の横取りみたいなことが日常茶飯事だ。悪意を持ってやっているのか、幼稚なのか知らないが、化学者が権力にすり寄ってどうする。  難病以外開発され尽くされているといわれているこの業界で新薬が雨後のたけのこのように出てくる。本当はありがたがる必要はないのだ。今までの薬で十分長生きできているのだから、新しい薬など必要ない。それよりも使い古され、効能も副作用も信頼できるデータがそろっているもので十分だ。  自分が属していながら言うのはおかしいが、かなりダーティーな業界だ。ブラックに見えないブラックだ。