明太子

 これは迷う。まだチケットが手に入っていないから、皮算用かもしれないが、迷う要素がたくさんありすぎる。  会場の詫間と言う町が意外と不便なところにあることが分かった。香川県は狭い県なのに、予讃線で丸亀から30分もかかるのは予想外だったし、駅から会場まで徒歩で20分以上かかるのに、バスの乗り方が分からない。時刻表が添付されていたが、会場がどのバス停か分からない。途中丸亀城を案内し、その入り口辺りにあるうどん屋が美味しかったから御馳走しようと思うが、途中下車しなければならないから予定が立ちにくい。かの国の人は写真魔が多いから予想以上に時間を食うことは間違いない。チケット代を含めれば一人当たり4000円くらいの接待になる。これで和太鼓を聴きながら居眠りでもされたらかなわない。  その日は日本語検定の試験の日だ。牛窓工場の通訳も受ける。この秋に帰るからなんとしても1級の証書を持って帰って欲しいが、かなりの難関だ。そうした知性の持ち主にこそ、この国の伝統文化に接して帰って欲しいが残念ながら日程が合わない。となると人選が難しい。4級5級を受ける人もいて、向学心に燃えている人こ限って連れて行けない。  電車賃を倹約するために車で行けばいいのだが、道のりを見たら気持ちがなえる。昨日福山に行ってきただけで疲労感がすごいのに、なんとなく四国に渡るということだけで疲れてしまう。フェリーを利用したり、瀬戸大橋を利用したりしなければならないから心理的に遠いのだろうか。  もうこうなればこそっと1人で楽しんで来ようかと意地悪な考えも頭に浮かぶ。そうすれば行き当たりばったりの電車に乗り、丸亀城も見る必要もないし、昼ごはんはコンビニの明太子のおにぎりでいい。(この明太子には拘るが)往復の道中で普段目を通すことの出来ない薬学の雑誌を2冊は読めるだろうし。  うーん、本当に迷う。