言葉

 牛窓のように沿岸部でないから、いや寧ろ僕らからすれば随分北に住んでいる印象があるから、「魚をよく食べる?」と尋ねてみた。お子さんの相談に来た人なのだが、その辺りは一体何から主にタンパク質をとっているのか知りたい気持ちもあった。  案の定、魚は随分と少ないみたいだった。若いこともあるだろうがやはり肉が多かった。「やはり新鮮な魚が手に入らないの?」と一番無難な質問をしてみると、そうではなかった。そして面白い答えをもらった。「私、魚の目が苦手なんです」「目が出ているから?」「いいえ、なんだか、魚に見られているような気がするんです。目が会うといやなんです」これには参った、と言うかそのユニークさが興味深かった。お子さんのことをとても大切にしている、飾り気のない素敵なお母さんなのだが、目が会うのを嫌がって魚を食べないと言う珍回答は独創的だ。まるで大人のような繊細さを身につけているお子さんは母親に似たのだろう。  薬局の中の気取らない会話の中にもきらりと光る?さらりと流す?ころりと参る?ぽろりと漏れる?ほろりとする?言葉がある。