犠牲

 2週連続で、かの国の若い男性達と過ごしたので、この国の多くの中小企業が、安い労働力として大いに重宝していることが良く分かった。数年付き合っている若いかの国の女の子達が、牛窓にも工場を持つ結構大きな会社に勤めているのとはうって変わって、下手をしたら僕の薬局くらいの規模の工場ではないかというような規模の所ばかりだった。仕事の内容は自ずと、きつくてなんとやらのお決まりの3Kだが、国民性なのか、彼らは結構明るくて、聡明そうで、誠実さがはみかみの中に醸し出される。  僕が薬局をやっているってことが分かって、2人の男性がそれぞれの医療に関するエピソードを語ってくれた。一人は虫歯で歯医者さんに行ったら結局、2万円以上とられたと言っていた。一度に治してくれずに少しずつ治してくれたと言っていたが、その少しずつと2万円以上が彼にとっては驚きだったようだ。「オトウサン タカイデスネ」が彼の印象だ。もう1人の男性は、「チョット アタマイタイデスネ ビョウインイキマシタネ カミモッテ クスリモライマシタネ タカイデスネ」と言った。要は頭痛がしたから病院に行って診てもらい、処方せんを持って調剤薬局に行ったのだが、2回料金を払いその都度高く感じたのだろう。かの国が医薬分業になっているのかどうか知らないが、頭痛ごときで2箇所も回り、その都度お金を払うのはこたえるだろう。  今度調子が悪ければ僕に連絡するように言った。僕はかの国の子達には、是非沢山のお金を国に持って帰って欲しいから、薬代はもらわないようにしている。元々、外国で働こうと言うくらいな人達ばかりだから元気なのだ。だから1服で治ったりする。値段を付けようがなくて面倒になってお金をもらわないようにしたという側面もあるのだが。  ビニール袋に入りきらないくらい薬を持って帰る老人が、保険で1000円未満の支払いだったりするからしわ寄せを受けて、かの国の、いや日本の国の若者も、「タカイデスネ」になってしまう。老化を病気にして国からお金を巻き上げようとする製薬企業の犠牲に、東南アジアからの若い助っ人達もなっている。