達成感

 便秘と無関係の人からすれば、いや経験者にとっても20錠というのは驚異の数字だろう。ただ実際世の中にはそうした人も珍しくはないのだ。それでいて別段大きな病気を抱えていることもないのだから、人間って強いと思う。ただ将来どうなるかは、楽観的な予想は立てにくい。腸を痙攣させてやっと排便があるなんてのは、そしてそれがコーラックだとしたら、一番なりたくない病気の最短距離を歩む可能性も高い。 こうした人に最早地力で排便できる機能が残っているようには思えない。病院でもかなり苦労して、半ばお手上げ状態だと思う。だから市中に放り出されて手っ取り早くをモットーに刺激性の便秘薬をひたすらエスカレートさせる。よくあるパターンだ。  ただこの人はその状態に危機感を持ったのだろう。だから1年以上、僕に猶予を与えてくれたのだ。もっとも他の症状がそれより早く改善してもらえたから、希望を託してくれていたのかもしれない。ただ、僕としては期待してくれている反応をなかなか呼び寄せれないことに申し訳なさを常に感じていた。僕自身もどうして反応が出ないのだろうと、不思議に思っていた。理論では治す自信はあったが、結果がなかなか出ないのだ。ところがこの秋から、数日経てば地力で排便出来るようになったと報告があり、直近の処方ではますます自然な排便の頻度が増え、排便自体が凄く気持ちよいものになったらしい。電話の向こうにとても幸せそうな女性の声が響く。達成感の共有だ。 ぶれることなく、ただひたすら機能を良くするだけの漢方薬を飲んでもらったことが功を奏したのだと思う。下剤ではなく機能を良くする。一見遠回りのように思うが、加えてとてもそんなこと出来そうには思えないが、そこはやはり自然の生薬の持っている力だろうか、実現不可能のようなことが実現しつつある。これが是非ぬか喜びで終わらずに、電話の向こうとこちらでもっともっと高い達成感を共有できたらと思う。