自転車

 こんなに長い時間、岡山市内を自転車で走ったのは高校、浪人時代以来だ。僕らの高校生の頃は嘘か本当か知らないが、全国で一番自転車が普及している街と言われていた。確かに高校生の9割以上が自転車通学だから、朝の自転車の列は壮観なものがあった。 かの国に帰った子が、岡山の語学の専門学校にやってくると連絡をくれたので、その専門学校をこの目で見てみようと思い、自転車を荷台に積んで今朝は出かけた。インターネットで調べたが、あまり行ったことがないような所だったので、小回りの利く自転車が便利だろうと思ったのだ。見当を一応はつけていたのだが結構苦労した。とんでもないところを最初は探していたのだが、印刷していた地図を何度も見直して最終的にはたどり着けた。でも今日の行動で二つのことを見つけた。  一つ目は折り畳み式の自転車のサドルはとても小さくて、10分も漕げばお尻が痛くなるってことだ。今までよく考えてみたら連続でそんな時間漕いだことはない。せいぜい近くの歯医者さんに行くときに使っていただけだから、まさかお尻が痛くなるなんて考えもしなかった。結局途中からは平地なのにお尻をあげてあたかも急いでいるような漕ぎ方をした。  二つ目は、岡山駅は色々な路線の交わるところだから、結構線路が沢山あって、大きな駅だ。駅の裏側に渡るのに、五〇〇メートルくらい離れたところにある跨線橋を利用しないと渡れないのかと半ば諦めていたのだが、ひょっとしたら自転車のための通路があってもおかしくないと閃いた。と言うのは昨日京都駅に京都水族館から歩いて帰るときに、上手く作った抜け道を通ったのだ。人の流れについていったら驚くような工夫で便利な抜け道が造られていた。だから何となく岡山でも自転車の為の抜け道があるのではないかと思ったのだ。さもないと自転車の人達の迷惑はかなりのものになる。案の定、自転車置き場のすぐ傍に、地下へ降りていくかなり急なカーブのある地下道が造られていた。高校生時代、岡山の街を自転車で徘徊していたが、この地下道は知らなかった。いつ作られたのか知らないが、自転車しか通れない道なのに「事故多発、スピードの出し過ぎに注意」と大きな看板が出ていた。如何に急ごしらしたかよく分かる。  夏なみの暑さの中の自転車は楽しかった。嘗てほど機敏に動けないんだと自分に言い聞かせながらの自転車だったが、心は青年のようだった。