貯金

 元々僕は物には拘らない性格だから捨てがたいものなど何もない。いや一つだけあるかな。学生時代弾いていたギターくらいなものかな。それも別に想い出がつまっているからではない。勉強がいやで逃避の象徴みたいな物だったから、よい想い出も蘇らないが、今でも十分使えることと、もうあの値段であのギターは作れないと聞いているからだ。 そんな僕がついに今乗っている車を諦めかけた。17年経てば、シートは破れて、ドアの内側の皮もかなりはげている。そのくらいは気にならないのだけれど、販売店で試乗した車があまりにも安全性が向上していたから、替えるべきかなと思ったのだ。僕の車選びの唯一の基準は安全性だから、その点にはかなり惹かれた。そして気持ちはほとんど契約状態だった。  ところが家族はみんな反対した。質素を家訓としている僕には合わないと言うのだ。その言葉で僕は心の急ブレーキを踏むことが出来たのだが、今回のことである想いに確信を持った。  世はまさにアホノミクスのせいで虚構に向かってひた走っているが、そして物を買えとせき立てられているが、僕は当分物はもたない、買わないのが良いと思っている。経済には全く疎く、そのせいで僕の薬局もこの程度なので論ずる資格はないが、感覚で分かる。オリンピックを誘致したが、それも出来ないと思っている。漏れ出る放射性物質を早晩コントロール出来なくなって、日本中のどこがどの様な状況に晒されるか想像が付かない。そんな状況の中で、家を買え、車を買えなんてあり得ない。家も車も置いて逃げなければならない状態で、借金だけつきまとってくることになる。 家は賃貸、車は乗り捨てできるほどのポンコツ後進国に逃げて、貯金で一生を終えられるように現金を持っていた方がいいと思う。月1万円から4万円くらいで過ごせる国に逃げれば、僕ら庶民でも何とかなる。下手にこの国にしがみついて放射能にやられたら悲惨なだけだ。  消費税が上がるから等とくだらない番組でやたら煽っているが、今どう振る舞うかが問われていると思う。