薬剤師免許

 4時間その場にいたら死んでしまうような高濃度の所で誰がタンクの修繕作業をしてくれるのだろう。これから次から次へと同じことが起きるのは明白だ。いや、それ以上のことも起こるだろう。もうお手上げに近いところまで来た。そんな国でオリンピックを開催して、どこの国の若い選手がやってくるのだろうと、不思議でならない。人の健康に配慮すらしない本性がばれないと信じ切っているおめでたさには呆れる。 福島がもういつまでもつか分からないから、そろそろ準備くらいしておいた方がいいと思って、昨日ある国の大使館に電話をかけた。東京にある大使館なのに出てきた女性が英語で喋り始めた。込み入った話になるから日本語が出来る人はいないですかと尋ねたら、まだ英語で返事をしてきた。何を言っているか分からなかったが、15分という英語だけ分かったから、15分経ったら日本語が出来るスタッフがやってくると理解した。  かなり余裕を持って1時間後くらいに電話をし直した。するとやっぱり英語の女性が出てきたから、僕の15分後という理解は間違っていたのかもしれない。英語のできなさを残念に思ったが、残念に思っても勉強をしようとは全く思わないところが僕の抜けたところで、それだからこそもっている。潔癖も頑張り過ぎも良くない。  当事者に聞くのが一番と思って大使館に電話をしたのに、言葉の壁で回答は得られなかった。そこでインターネットに以下の言葉を入力して検索した。「薬剤師免許 外国」すると正に僕が知りたいと思っていたキーワードで回答が出ていた。回答の内容は残念だったが、言葉が通じない国で薬剤師として、日本の薬剤師免許を持っていても、働けるわけがないよなと納得した。淡い期待をもって放射能を避けて外国に行き薬剤師として第二の人生を送ると言う選択肢は、一瞬にして消えた。 こうなれば残された選択肢は2つだ。薬剤師ではなく、この美貌を生かして外国で俳優として生きるか、僕だけこの国に残り放射性物質に晒されながら漢方専門薬局に間口を狭め、せっせと家族に仕送りをするかだ。どちらも現実味を帯びて実現性は高いが、それにしても被害者として国を出ていくのは腹立たしい。せめてあいつらが塀の中に入れられるのを見てからにしたい。