美人過ぎる・・・

 美人過ぎる市議でもないし、美人過ぎる海女でもないし、そうだ、美人過ぎる女医だ。 観光地だから知らない人が買い物に来ることはしばしばある。ただ買い物に来た人が突然「大和くんのお父さんですか?」と尋ねることは滅多にない。だから僕は面食らった。確かに大和くんのお父さんなのだが、その女性の真意が分からなかった。もっともあちらにとっては真意もへったくれもなく、ただ大和くんのお父さんかどうか確認したかっただけなのだが。 名乗ってから逆にあちらの素性を尋ねると息子と同じ所で働いていた。大和くんという呼び方からして僕は同じ世代の方だと思った。すらっとしてとても美人で、医師のようには見えなかった。おまけに、話すときにいつも笑みを浮かべていてとても親近感が持てる印象だった。専門を尋ねると形成外科だと言っていた。外科と言うところばかりが耳に残ったので、見かけによらず血なまぐさい科を選択しているのだと勝手に理解した。ただ、あまり耳にしない科だったので帰られてからその病院のホームページにアクセスしてどんなことをする科なのか調べてみた。すると僕の勝手な想像とは違っていて、外見の病的あるいは美容的な不都合を治す科だと理解した。そしてスタッフ紹介の欄を見てみると、その女医さんの年齢が分かった。なんてことと驚かざるを得なかったが、息子の世代より寧ろ僕の世代に近い。見かけより数歳若く見える人はいるが、20歳も若く見える人は滅多にいないだろう。女性の年齢を当てるのは男にはなかなか難しいが、普通20歳も間違わないだろう。  「説得力があるなあ」感心して何度もこのフレーズがその後浮かんだ。天賦のものか、職業的に築き上げたものか分からないが、あれだけ美貌と知性を誇ればまさにご自分が専門としている科の実力を証明しているようなものだ。まさに打って付けの科を選択したことになる。  振り返ってみれば、僕がいくら漢方薬を懸命に作っても、見るからに元気になれそうもないし、見るからに美しくなれそうもない。このハンディーを何によって補おうかと思うが、このハンディーを逆手にとるしかない。多くの相談者が薬局から出ていくときに後ろ姿で語っている「あの人よりは私の方がまだましだ、良かった」と。