敗走

 下一桁の数字があっているかどうか心許ないが、確か殺人の47%が家族内殺人らしい。このことに関して何ら意見を述べる材料を持っていないが、殺人者になるために一緒に暮らしてきたこと、逆に殺されるために一緒に暮らしてきたことが哀れで仕方ない。 ほぼ半数が家族内殺人なら、犯人を捕まえることなんてとても簡単だ。目星は確率2分の1でついてしまう。それを承知で殺人を犯してしまうのは余程追いつめられてのことだろう。ことの顛末はそれぞれだから、個々の安易な評価は慎むべきだが、留まるところを知らない家族の崩壊に、いっそのこと家族でなかったらと思ってしまう。  守り守られる最後の砦は、最早砦ではない。砦の中にこそ憎悪は潜む。この国で嘗てこの様な時代があったのか、世界でこの様な国が他にあるのか知らないが、僕はこの世(社会)の敗北だと思う。世が敗走しているのをリアルタイムに眺めているようなものだ。家族に殺められるなんてとんでもない時代に生きているのだと思う。