苦手

 やっぱり苦手だ。お金持ち過ぎる人。肩書きがありすぎる人。プライドがありすぎる人。学歴がありすぎる人。そんな人はほとんど縁遠かったのだが、この何年間は、遠くから来られる人が多くて、僕の薬局ではお目にかからなかったような人が来ることが増えた。そう言った人と普段接することがなかったので、特別の応対方法も知らないし、する気もないから、本来はそんなにうち解けることもないのだが、時にそう言った部類の人の中でも特別人格者がいて、僕の普段通りの接し方を好んでくれることもある。  その種の人達は、さすがに最初は誰もが体調不良でやってくるから、まずまずの礼儀は保証される。ところが段々調子が良くなってくると地が出てしまい、言葉使いさえ上から目線に変わってくる。どうせなら最初から地を見せてくれていれば落胆もしないのだが、演じ終えた後の姿を見せられるのは如何にも空しい。  折角田舎の薬局に来るのだから、「過ぎる」ものは全て忘れてくればいいと思うのだが、どうも身に付きすぎているものは簡単には脱ぎ捨てることが出来ないらしい。着ていようと脱ぎ捨てようと、こちらの態度は変わらないのだから、心の中まで身軽になった方がいい。お金も肩書きもプライドも学歴も、人の心を征服できるものではない。そんなものより、ふと垣間見える謙遜とか、優しさの方が余程心を掴む。  多くを与えられず、それでも懸命に生きている人達の変わらない接し方に救われる日々だ。