屈辱

 背中にパットを当ててくれると、低周波が筋肉を痙攣させる。気持ちがいいほどこたえない。効くから整形外科のクリニックに備えているのだろうが、僕にはしてもしなくても同じだ。同じようにしてもしなくても同じなのがもう一つあって、赤外線だと言って患部にあてられるのだがこれ又何も感じない。看護婦さんらしき人がやってくれるときに説明してくれたのだが、説明のように血流がそれで改善したようには最後まで思えなかった。 こたえもしないこの2つの器機と違って、首の牽引はこたえた。それこそ痛みで顔をしかめるほど効いた。何分治療するのか分からないが、早く終わってくれないかとばかり考えて、ひたすら耐えていた。強ければ効くのだろうと頑張ったが、日を重ねるに連れて悪化した。 数年前に経験した激痛ほどではなかったが、同じ箇所が同じように痛くなったのでレントゲンを撮ってもらった。2箇所の椎間板がひしゃげたようになり、2箇所に骨の棘が出来ていた。病名は何も告げられなかったが、その写真を見れば摩耗しているのがよく分かる。そして治療は先の理学療法と薬だ。薬はすでに飲んでいて効かなかったのだから、理学療法に期待して診察を受けたのだが、より強い薬を勧められたり、効果がなかったらギブスや大きな病院でMRI検査を受けるように勧められた。なんとか早く苦痛から解放されたかったので、僕は3週間真面目に牽引などを受けに通った。でも先に述べたように一向に良くならない。リハビリの部屋には何の免許を持って働いているのだろうと思えわれる女性スタッフが沢山いて、器具をセットしたりはずしたりしてくれる。分かっているのか分からないのか知らないが、その様な人に我が身を委ねるのには抵抗があった。自尊心を脱ぎ捨てないと受けることが出来ないような内容と熱意のなさだった。  3週間通って全く改善しなかったので、20代の頃から世話になって今は引退された鍼の先生に尋ねてみた。するとその先生は、名前は難しいから忘れたが、ある筋肉の緊張で神経を圧迫しているのではないかと教えてくれた。痛み方やシビレ方で先生は想像されたのだろう。そしてあるところを優しくマッサージすれば改善すると教えてくれた。そしてそれを実行すると、3週間毎日の痛みとしびれで苦しんでいたのがほとんど改善してしまった。  レントゲン写真の前でマイナスなことばかり言われ、特別気持ちの入った治療などされることなく、免許を持っているのか持っていないのか分からないような女性スタッフに、まるで病人扱いされ、いわば屈辱の3週間だった。レントゲンを撮ってもらえば治るのなら、又何か処置が出来るのならそれはそれで我慢するが、はなはだ簡単な治療でほとんど自然治癒を待っているようなものでごまかされた。  僕は鍼の先生や指圧の先生を多く知っているが、余程彼らの方が熱心だ。それなのに評価が、経済的なものも含めて低い。肩書きや政治力の全てで劣ってはいるが、熱意はそれらを覆すほど持っている。やはり何でも満たされていない人達の方が余程人間らしいのだ。