親近感

 東の方の人には分からないかもしれないが、この辺りでは香川県讃岐うどん横綱だ。他に追随を許さない。香川県ではラーメン店よりうどん屋さんの方が多いと言うから余程だ。なんて感心していたら、好きな人は1日3食うどんを食べるらしい。  若い頃はあらゆる勉強会に出席していたから、香川県にも瀬戸大橋を渡ってしばしば出かけていた。ある時、時間があったから商店街を歩いていて「香川で2番目に美味しい店」と言う看板を掲げているうどん屋さんを見つけた。良くある手だと思いながら、のれんをくぐってかの有名な讃岐うどんを注文したのだが、きつねと少々のネギが載っているだけの極めてシンプルなものだった。これがかの有名なうどんだと喜び勇んで食べたけれど、特別美味しいとは思わなかった。ひょっとしたら、香川で2番目に不味い店に入ったのかと思ったが、ネームバリューに負けて、これこそが本当の讃岐うどんだと言い聞かせて店を出たものだ。  そんな記憶を呼び起こしたのが、今日発表された生活習慣に関する調査結果だ。ニュースで見たのだが、調査したのは厚生労働省かもしれない。その中で全国で一番野菜を食べない県として香川県が上がっていたのだ。毎食でもうどんを食べて、ほんの少々のネギですませていたら圧倒的に野菜が不足するのは目に見えている。なるほどなあと合点した。僕もそうだが、ツウにとって余分なものは少ないのがいい。シンプルに優るものはないのだ。香川の人の王道追求がなせる調査結果だと思った。  海岸に出れば海の向こうに見える県だから親近感を常日頃持っているが、野菜を食べない日本一だと聞いて余計親近感を持った。うどんは「素どん(すうどん)」がいい。ラーメンも「素ラーメン」がいい。人間も「素浪人」がいい。