震度6

 どう見てもブログを読んだりするように見えないから安心して正直に書いていたのだが、何を間違ってか僕のブログを見つけて読んだらしい。運の悪いことに過去2回しか登場させていないのに、その1回を見つけて読んでしまった。その感想が「もうちょっと、格好良く書いて」だった。僕は正直に書いているから彼だけを脚色は出来ない。どう見ても僕のように福山雅治には似ていないし、どうみても僕のように見るからに音楽をやりそうには見えない。彼の魅力は意外性に尽きるのだ。ひょっとしたらこのブログも読むかもしれないが、いつものように正直に書く。  仮設住宅の井戸を掘るために被災地に入っていたらしいが、そこで震度6の余震に遭遇したらしい。岡山県の人間でその規模の地震を経験している人は少ない。その規模どころか小さな地震すら滅多にないのだから、地震に対しての免疫はほとんど持っていない。従業員と一緒にホテルに泊まっているときに地震が起こったみたいだが、その時の慌てぶりを教えてくれた。一人の従業員が慌てて2階から飛び降りようとしたから彼が引き留めたらしい。もう1人は押入に入り込み布団をかぶっていたらしい。さて肝心の本人がどの様にしのいだのか説明はなかった。堂々と落ち着き払っていたのかどうか知らないが説明はなかった。ただいつもなら電話で要件しか言わない彼が珍しく長話した。人に喋らずにはおれない珍しい恐怖体験だったのだろう。  地震の恐怖体験と共に興味をひいた彼の話は、一つは何処も同じかもしれないが役所仕事の遅さを嘆いていた。目の前の需要を前にして歯がゆかったのだろう。それともう一つ、幾度となく語られているが、東北の人達の忍耐強さにやはり感動していた。それに関して彼一流の表現方法を使って教えてくれた。「こんなことを言って悪いけれど、地震が東北の方で良かった。みんな本当に忍耐強く耐えているんだもの。これが岡山県だったらイラチばかりだから、あんなに整然と耐えるもんか。おっどりゃあ、なんじゃあかんじゃあといらついて世界に日本人って一体どんな人間なんだと思わせて赤っ恥をかいているのが落ちじゃ」と言った。運の良さを喜ぶのではなく、東北人の気骨を褒めた表現だが、こんな表現が出来る平穏を味わっているのかもしれない。  毎日タバコを100本吸い、コーヒーを10杯飲み、それで健康なら人が怒りそうだが、それで健康なのだから人が怒る。井戸掘りの会社で実績はあるが、余りにも豪傑すぎてそのうち井戸ではなく墓穴を掘るのではないかと心配している。