PTA会長

コレステロール値が高いのですが、卵は食べてもいいでしょうか」。薬局に帰ってきた頃から繰り返される質問だ。その時々の科学的な裏付けを読んで答えるが、そろそろもう大丈夫と言った方がいい形勢になってきている。確かに鶏卵は、1個当たり約215mgと多くのコレステロールを含んでいる。しかし、実際に卵摂取と心筋梗塞の関連を調べた厚生労働省研究班による研究の結果、卵摂取の多寡と心筋梗塞の発症リスクは関連しないことが明らかとなった。また卵の摂取頻度と血清総コレステロール値との間に関連性は認められなかったらしい。もっとも最近の研究では食事性のコレステロールの割合はしれていると分かっていたので卵でも同じ事が言えるだろう。また、約10年の追跡調査の結果、卵を毎日食べる群に比べ、ほとんど食べない群でも、心筋梗塞の発症リスクは低下しなかったらしいから、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を予防するために、卵を制限する根拠は得られなかったわけだ。僕ももう10年くらい前になると思うが「コレステロール値が高めで、動脈硬化を心配する患者の食事指導では、むしろ魚を積極的に摂取するよう勧めた方がよい」と話される富山大和漢医薬学総合研究所の浜崎教授の講演を聴いたことがある。前述の厚生省の研究では、魚の摂取量が多いほど心筋梗塞の発症リスクは低下する傾向にあることが判明している。「魚に多く含まれるEPADHAなどには、動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームといった様々な疾患の予防効果が報告されており、魚の積極的な摂取のメリットは大きい」と話される浜崎教授の言葉を待たなくても、海辺の僕たちは結構魚を食べている。子供の時など魚以外主菜としては食卓に上らなかったくらいだ。  ところが恥ずかしながら、この僕もコレステロールが高い事が最近分かった。恐らくバレーボールを辞めて運動をしなくなったことと、遺伝をひいているのだと思うが、人間に似て悪玉が多い。善玉に至ってはすこぶる少ない。これも僕の性格そのものだ。一番良くないタイプなのだが、薬を飲もうか飲むまいか迷っている。毎日送られてくる情報誌は脅迫状のようなものだ。恐ろしくて目も通せない。魚はしばしば食べているのに、EPAもDHAも僕には貢献してくれていないのだろうか。PTA会長をいやいや引き受けたのも貢献していないのか。 歳と共に体の中にいらないものが蓄積してくる。血液の中、脂肪の中、まるでヘドロのようなものだ。せめて心の中は空っぽにしたいのだが、心より財布の方が一足先に空っぽになりそうだ。