集音機

 ある女性からメールをもらった。以下のような内容だ。彼女に返した僕のメールがその下のもの。同じような悩みを持っている人に読んでもらいたい。

「今、落ち込んでます。一週間前にショッピングモールに行ったんですけど、そこで若い男の子にすれ違いざま『ウンコクセ~』と言われてしまいました」

 都会の中には大変な言葉が行き交っているのですね。その若い子がすれ違いざまにその様な言葉を発することが出来る状況を考えてみましょう。貴女とすれ違い瞬時に臭ったとすると、その子は何も考えることなく反射的に言ったことになります。人が一杯の中で、回りにどんな人間がいるか分からないところでそんな攻撃的な言葉を発する勇気がある人がいるでしょうか。もし相手が悪かったら、かなりの反撃を食らうことを覚悟しなければなりません。いわば命がけの言葉です。逆に決闘でもするように、0コンマ何秒の早撃ちをしようとすればかなり前もって意識して用意しておかなければ出来ません。貴女とすれ違うときではなく、貴女が近づいたときに感じて、構えていればなんとかすれ違いざまに言うことは出来るかも知れませんが、それだったら貴女とすれ違った人達全員が同じ感覚に陥るはずです。貴女はその日何百人、いやそれ以上の人達とすれ違いました。ところがそんな言葉を投げつけられたのはたった一度です。いや、投げつけられたと言うよりも、何のために言った言葉かも定かではありません。誰に向かって言ったのかも確かめる術はありません。ただ、コンプレックスがあったら全ての言葉、態度を引き受けてしまうのです。それは臭いだけに限ったことではありません。みんな同じです。自分が一番聞きたくない言葉を集音機のように集めてしまうのです。青年の単なる一人言か単なる強がりに惑わされてはいけません。そんなものに人生を乱されないようにしましょう。そもそも僕は貴女の倍以上の年月を生きてきて、貴女の何倍も人と接してきました。そんな中で「ウンチクサイ」人になんか会ったことがありません。貴女もそうでしょう。言われたことは何度となくあったみたいですが、貴女と同じような人に会ったことはないでしょう。僕は貴女と同じ悩みの人を沢山知って、沢山治っていただきました。誰も「ウンチクサイ」人はいませんでした。貴女の思い込みよりも、目の前にすごい美人が現れたからひがんでいった言葉のように聞こえる僕の推論の方がまだあたっているかもしれませんよ。どうです、ウンチクに富んだ話ではないですか。 ヤマト薬局