体罰

 熊本大学ハーバード大学の共同研究で、子供の頃長期に渡って強い体罰を受けた人は、受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で19%縮んでいると言うことが分かった。アメリカで4~15才頃に平手打ちにされたり、鞭で尻を打たれるなどの体罰を年12回以上、3年以上に渡って受けた男女32人を調べたらしい。すると体罰を受けずに育った人に比べて感情や意欲に関わる部位が19%、集中力や注意力に関わる部位が17%、認知機能に関わる部位が14%小さかったらしい。小児期に過度の体罰を受けると行為障害や抑うつなどの精神症状を引き起こすことは知られているが、脳への影響は解明されていなかった。今回、MRIでの脳の断面図の解析で分かった。友田準教授によると体罰でストレス下に置かれた脳が、前頭葉の発達を止めたと考えられるらしい。  要約すると以上のような内容になるが、この発表を読んで辛かった。素人考えだが、日頃僕は、人間は身体の一部を犠牲にして生命そのものを守っていると考えている。ストレスがかかると、胃が痛み、脈が飛び、胸が苦しく、下痢をし・・・・・全部、局部を犠牲にして全体をかろうじて守っているように思える。もし、ストレスがかかってその様な反応が出なかったら、命そのものがポキッと折れてしまうのではないかと思う。  幼い子が、親の虐待の恐怖から逃れるために思考力を働かせれないように大脳の働きを自ら止めたとすればどんなに辛いことだろう。こんな不幸があるだろうか。そして、こんなに罪深いことがあるだろうか。反抗できない幼子に何が出来るだろう。思考回路を切って人間を止めるしかないではないか。医学が暴いた虐待は、体の表面だけではなかった。もっと、もっと残酷で取り返しがつかない恐ろしいものだった。