釣り人

 今朝は余程空気が澄んでいたのか、犬の散歩で海岸線に行くと、小豆島はもちろん、香川県屋島もくっきりと見えていた。屋島は溶岩台地らしく、その名の通り屋根の形をしている。幼いときから、その一風変わった山は、いつも海の遠くにあった。その姿の見え具合で、澄んだ日かそうでないか判断していたような記憶がある。  今朝は眠っているときから、そんなに暑くは感じなかったので、少しはすがすがしい朝になってくれるのではと思っていたら、やはり犬と歩いても汗はにじんではこなかった。たった、1度だけでも気温が下がり、冷気が網戸を抜けて入ってくれないかと、毎晩クーラーを使わない僕は、寝苦しさの中で念じている。少しでも睡眠の質が良くなり、疲労がとれることを期待しているのだ。1度の差を僕は眠ったまま感じることが出来る。ほとんど外気と同じ気温で毎晩眠っているから。  堤防の上で男性が釣り竿を投げていた。いつから釣っているのか分からないが、何とものどかな光景だった。時間がゆっくりと動き始めた朝の風景に全く染まっていた。この何でもない情景こそ価値があるのだ。この何でもない情景がいつまでも続きますように。これさえ出来無くなったときこの国は再び不幸になる。