沈没

地球温暖化・人類滅亡のシナリオは回避できるのか」の著者によると、日本の二酸化炭素排出量に対する家庭が占める割合は全体の13%だそうで、全体の半分はたった、167の大規模工場が出しているらしい。また、ピーク時の電力は家庭が9%、産業が91%消費しているそうだ。  この内容を知って僕は溜飲が下がる思いだった。何となく庶民が節約をすれば地球の環境を守れるようなニュアンスの映像を繰り返し流されて、いかにも僕らの努力が足りないような印象を植え付けられているような気がしていた。僅かな庶民の営みでも、数が集まればそんなに地球環境を壊すのかと、何となく居心地の悪さを感じていた。それがこの著者によると、昔僕らが感じていたようなことのほうがむしろ現実なのだと教えてくれる。枯れ草を燃やすだけで宇宙まで煙が届くのか、それよりもモクモクと天高く上っていく工場の煙こそ宇宙に届くのではないかという素人の発想の方が、真実を突いているのではないかと。  又世界の紛争地域は、石油や天然ガス、鉱物資源、水がある地域だそうだ。なんだ、格好良いことを言っていても本当は、欲の突っ張り合いだったのだ。おもしろい発想をするが説得力がやたらある。庶民の努力を否定するつもりは全くないが、いかにも企業が環境先進国をリードし、庶民が足を引っ張っているような映像を流されるのは抵抗がある。僕が幼い頃見た島々は、もう少し大きかった。今は明らかに海面が高くなり島が小さくなっている。バングラディッシュだけではなくこの国もいずれ沈没する。しかし、庶民に責任も結果も押しつけるお偉い人々の正義感はとうに沈没している。