歌声

 ああ、これを歌声というのかと思った。広い御堂に、たった一人の澄んだ声が響く。空気を切って伝わる声は、畏れ多い存在へのひれ伏した姿だ。ゆっくりと、旋律に乗って揺れる姿に喜びが溢れ、波紋のように人々の心に届く。  氷点下の雪が降る。小声で誰かが魂を凍らせろとささやく。懺悔は轍を蹂躙する。門を開け、誰かが訪ねてくれるのを待つ。心を閉ざしては聞こえない。天を仰ぎ、畏れ多い存在を賛美する歌声に誘われて、もう一度、もう一度と起きあがる。