野菜

 残念と言ったらいいのだろうか、申し訳ないと言ったらいいのだろうか。  恐らく長い間、多くの医療機関が、僕ら薬局も含めて知ったかぶりの顔で「野菜を食べないと癌になる確率が上がるよ」何て事を言い続けてきたのではないかと思う。このほどそんな常識を覆す結果が世界がん研究基金(本部ロンドン)の報告書で明らかになった。10年前では「確実にリスクを下げる」と評価されていた野菜が、「恐らく」なんて、曖昧な表現にトーンダウンされた。果物も同じ傾向らしい。東北大学の坪野教授によると、過去に例がないくらいの大規模な研究分析で信頼性が高い報告らしい。  それに代わって一躍脚光を浴びた癌発症促進条件は「肥満」だそうだ。食道、膵臓、大腸、閉経後の乳房、子宮体部、腎臓がとくに関係するらしい。BMI25以上は気をつけた方がいい。野菜を多く食べる人は太りにくいので、あながち野菜を否定することはない。肉をもりもり食べて体重を維持するのは難しいから、間接的に野菜の貢献度は高いと思うのだが、かつて言われていた直接貢献する理由はなくなったみたいだ。  科学の発達に従って、かつての正論が一気に邪論にさえなりうる。学者でもない僕たちは、所詮情報の受け身の立場でしかないから、あまり思い入れを深くしてのめり込まないことが大切だと思う。多くの情報を軽く受け止め、最後に軽くクエッションマークをつけておくのが無難なようだ。  こと医学に限ったことではない。日常生活の中で思いこみや思い入れで墓穴を掘ることは多い。ニヒルな笑いを浮かべて風のように通り過ぎる術も必要なのかもしれない。