制服

 ある会社の制服を着た若い女性が3人連れ立って入ってきた。片言の日本語でサロンパスが欲しいと薬剤師に言っていた。(後で聞いたのだが、日本のサロンパスはとても品質がよくておばあちゃんへのお土産だそうだ)僕は丁度彼女らのそばでパソコンを打っていたので、自分たちで交わす会話を聞いていた。パコンパコンと言うような印象の言葉だったのでどこの国の言葉か尋ねてみた。するとベトナムだった。  僕が話しかけたので、その中の日本語が比較的上手な女性が積極的に話を始めた。ベトナムに来たことがあるかとか、彼女らが何才に見えるとか、逆に僕の年も聞かれた。他の2人は1年滞在して来週ベトナムに帰るらしい。一人がカトリック信者で教会に行けなかったことを悔んでいた。もっと早く僕を知っていればと言っていた。  通訳が出来そうな女性は26才で、二年間牛窓に住んでいるらしい。一度薬局にも来たことがあるのだが丁度僕は会えなかった。彼女は僕に、いつも薬局にいますかと尋ねた。彼女達が帰ろうとせず長い時間話したのにはわけがある。日本の男性はシャイで彼女達に話しかけてくれないそうだ。恐らく会話に飢えていたのだ   僕が彼女に幸せかと尋ねたら、彼女は次のように答えた。「日本に来て辛いことが多くて悲しい顔ばかりしていたけれど、私が変らなければ回りのなにも変らないと思って、いつもニコニコするようにした。そうするととても楽しくなった」と。その言葉の通り彼女は終始ニコニコしていた。僕は彼女の知性に感心した。わずか二年で日本語の会話をマスターし、思慮深い内容までも伝えられる。日本の多くの若い人と交流をもって欲しいと思った。  不意に入ってきた異国の若い女性との思いがけない交流は、3人とも笑顔がとても可愛くて、何かの惠のような時間だった。