この年令になると、若い女性の丁度父親にあたるみたいで、色々な悩みを打ち明けてくれる。表面的には物質に恵まれ、豊な時代を豊かに生きているように思うが、薬局で真剣に向き合って話をすると心の蔭の部分が浮きあがってくる。  大切な節目節目で、裏目に出たあげくについた職業だが、今はそれでよかったと思っている。そんな僕だからこそ心を開いて、悩みのほんの一部でも捨てていけれる人がいることを喜びに感じている。薬剤師だからか、漢方薬を多く扱っているからか、裏目に出た失敗体験が多いからか、理由は分からないが、心のうちを隠さずに話してくれる若者達に感謝したい。  薬局の特性で、健康な人はまずやっては来ない。どんなに人間関係で恵まれていても、どんなに経済的に恵まれていても、体調に或いは心に不調を抱えている人しかやってこない。青空に雲が浮かべば絵になるが、青空ばかりでは絵にはならない。人生も人格も同じだ。青空ばかりの人になにの魅力も感じない。オゾン層を突破した紫外線にやられるのが落ちだ。涙を溜めた雲を心に浮かべている人こそ魅力がある。僕は幸運にもそのような人と毎日会っている。