切符

夕暮れに追いかけられて 電車が走る やがて闇にのみ込まれるようにして 旅は終わる 見知らぬ街の交差点に立ち いくつもの顔を眺めた 一体 何を待っているのだろう 信号機が変るたびに 喪失の矢が 胸に突きたたるのに

ゴミ箱を漁る 若き浮浪者 行き交う欺瞞の洪水の中で 溺れないで欲しい 行き先が書かれていない切符を握りしめ ホームから転落した孤独な異邦人に 手を差し伸べるのは あなたしかいないのだから

無人の改札口に 幼子の鳴き声 受け継がれる生命 退場する幻影 旅の終わりは 行き先のない旅の始まり 追いつかれ 飲みこまれた旅の終わりは 行き先の書かれていない 一枚の切符