退場

 今朝、一番に入ってきた男性の話し。数日前テレビを見ていたら急に心臓あたりが苦しくなったらしい。救急車で運ばれ2日間入院した。心臓の血管にステントを入れたみたいだが、退院の時に請求書を見て、思わず間違いではないかと思ったらしい。彼は34と言う数字が頭に見えたから3万4000円と思ったらしいが、よくみてみると34万円だったそうだ。  そのうち高額医療でいくら返って来るのか分からないが、結構な額だ。これでは払えない人もいるだろう。この数年で、医療を始め、社会保障費がどんどん給付を削られている。もはや命や生活は保証されるものではなく、お金を出して買うものになった。そして買えない人は、枯れるように退場を余儀なくされている。居場所がどこにもなくなっている。  野良犬のように残飯を漁り、雨露を木の下か軒先でしのぎ、街の中をひたすらさまよう。摩天楼の上では、1万円札が紙飛行機になって飛んでいる。「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」と言ったその人の肖像が載っている紙幣そのものが、人の心を腐敗させ、蔑みの道具になっている。