土手は 葬儀場と少年野球を分けていた 黒い花輪は亡くした肉体の重さを測り 白球を追いかける歓声を聞いていた 昼下がりの土手は 南に下る葬送の うなだれた季節を冬に戻してた

向こう岸に渡った男が一人 煙突から噴出される嗚咽の煙 渡るに渡れぬ朽ちた小船 乾燥した空気は川面を滑空し 枯れても尚生きる葦の洪水

置いてきぼりの情景 先を急ぐ流れ 追随の無念 憤怒の逆流 跳ねる記憶 渦巻く悔恨 川底に横たわり息を潜めた実存 枯れても尚生きる葦の洪水