お血

 昨年、薬局に電機マッサージ機を設置した。松下電器の最高機種だ。僕自身が体中ガタガタだから欲しかったのだが、それを2階においておく必要はない。薬局を利用してくれる人が自由に使ってもらえば嬉しい。こちらも待ち時間を快適に過ごしてくれるならありがたい。ゆっくりと薬も作れるし、先客がいても待ってもらえる。ずいぶん重宝していたのだが、なんとその機種が不具合で発火の恐れがあると言う。今日買ったお店の店主が前もって教えてくれた。前もって教えてくれたのだが、インターネットを開いてみたらもう載っていた。  松下電器の製品では、石油ファンフィーターの死亡事故が新しい。巨額の金をかけて回収の宣伝をしていた。僕は水戸黄門を欠かさず見るので、その回収の告知は毎週見ていた。対岸の火事のように見ていたのだが、自分のところに火の粉が飛んでくるとは思わなかった。それにしても何故、天下の松下電器でこんなことが続くのか。僕ら素人に数ある機種を選択する能力はない。うわさや、店主の信頼性、歴史など、まさに製品とは全く無関係のところの判断基準でしか選択できない。これだけ不具合が続けばいくら義理堅い僕でも他に目をやりたくなる。目をやっても又機械音痴だから、返り討ちにでも合いそうだが。  団塊の世代が大量退職して技術の断絶が起こることが危惧されている。困れば自分の力でなんとかするのが人間だからいずれは克服される問題なのだろうが、その狭間で被害が出ては困る。こんな田舎にすんでいても、東京で誰かが風邪をひけば牛窓で誰かがくしゃみをし、大阪で誰かが鼻を垂らせば、牛窓で誰かが鼻をかむ。静脈はさておいて、動脈だけはこの国は循環している。ただ漢方を勉強している僕としたら、慢性的な疾患を呼び起こす静脈の詰まり(お血)のほうが心配なのだが。