ヨンダル

 先日、腸の癒着を手術した後、ひどい便秘に悩まされていると言う老人の漢方薬をお嫁さんにことづけたが、すこぶる調子がよいらしい。昼過ぎにその老人らしき人から電話があり、僕が電話に出ると女性の薬剤師さんをお願いしますと言われた。今日は休みで来ていないと言い、用件を聞くと、先日漢方薬をお願いしたものでと、丁寧にいきさつを説明してくれた。それで、経過を薬剤師さんに説明して、これから先のこともお願いしようと思っているということだった。そのまま電話を切ろうとするので、実はあの処方を考えたのは僕だから、僕がお話を聞けばよいと思うのですがと言った。ところが老人は、あと3日残っている薬を飲んでから詳しく経過を女性薬剤師さんに報告し、次の漢方薬をお願いしますと言って電話を切った。  電話で拒否されたのは初めてだ。初めて訪ねてきてくれる人たちが、僕を見てがっかりする光景はなれているけれど、電話で話しただけで拒まれるのは経験がない。余程女性薬剤師さんを信頼しているのか、僕の電話の応対に知性が感じられなかったのか。  今日の出来事で決心した。いつから行っていないのか忘れたが、今度の日曜日は、散髪に行く。白衣も汚れる前に着替える。サンダルは先が割れてヨンダルになっているから糸で縫ってサンダルに戻す。ズボンは20代の息子のお古だから、30代の甥のお古にかえる。声は品を出すように裏声で喋る。  これでバッチリだろう。大切なのは中身より外見だ。外見ならお金で買えるから簡単だ。外見を虚構で被い、不細工に不器用に生きてきた「自由」を捨ててしまおうか。それこそ高くつきそう・・・