図書館

 日曜日、漢方の研究会まで時間があったので、会場周辺をぶらぶら歩いていた。すると偶然市立図書館の前に出た。時間をつぶそうと入ったのだが、あの時間帯に、沢山の人が静かに本に向かっているのに驚いた。本棚のエンドの部分に椅子が用意されていたり、数人が腰掛けられるソファーが所々に配置されていたりで、その構造も興味深かった。きっと、30年間はこの種のところに入ったことはないだろう。だから勝手に整然と並べられたテーブルを挟んで、入館者が本を読んでいる光景を想像していた。ところが、まるで本屋さんで立ち読みしているような雰囲気だった。いかにも読んでいますではなく、ちょっと興味をひかれて目を通していると言う感覚がよいのかもしれない。僕も30分くらい椅子に腰掛けて興味をひかれた単行本を読んだ。  岡山に帰ってから、この時間帯僕はどのように過ごしていたのだろう。最初の数年間は、正月しか休みはなかったので働いていた。その後隔日に日曜日を休むようになったが、スポーツ少年団で、サッカーやバレーボールを教えたので、それで時間をつぶしていた。その後漢方薬を中心に薬局をやるようになり、出かけられるところは全部出かけていって、研究会巡りをした。  学生時代、1日の半分をパチンコに、1日の半分を読書に費やしていたが、その後は薬の本しか読んでいない。僕の知識や価値観は当時の遺産だ。途中で補充していないから、そろそろ燃料切れは自覚している。時間があればつい漢方薬などの仕事の本を読んでしまい、人間として身につけておかなければならない知識の供給が出来ていない。  昼下がりに、図書館で本を読む人とそうでない人の差は大きい。それが何10年も習慣化されて持続していたら、とんでもない知識の差が出来る。かたくなも、無知から出来あがっているなら悲しい。どうやら僕もその範疇に入っているみたいだ。価値観さへ、日進月歩の時代なのだから。