四万十川

 遅くなると言われて、先に食事を済ませておく術を知らないから僕はひたすら帰りを待つ。と言うか、食べずにいる。そのことはほとんど苦痛ではない。もともと昼食などいつ食べられるか分からない生活を何十年も続けてきたから、食べる時間にはこだわりはない。いつでもいいし抜いてもいい。一番困るのが、自分で何とかすること。これは苦手だし意欲もない。このことは父の世代を受け継いでいるのだろう。食事時、何もせずにただ腰かけているだけの僕に、同居していたベトナム人達が戸惑っていた。
 今日も待った甲斐があった。と言うのは妻がのりの佃煮を買ってきたのだ。昔はよく食べていた。お茶漬けで食べたら何杯でもお代わりをしそうだった。のりの佃煮は腸有名品があるから、今日はラベルを見て、そちらの興味も引かれた。と言うのは「四万十川ののり」と言う商品だったのだが、川でのりが取れるのと言う疑問が一つ。もう一つは、ラベルに四万十川ののり53%使用と書かれているのだ。正直だなあと言うのが第一印象。その後は、もし時期によって54%だったらまたラベルを書き換えるのかと言う疑問。
 ただそうした疑問を含めて、懐かしくて美味しい逸品だった。妻が小豆島の工場で出来ていることを僕に伝えながら、「やっぱり田舎の人は正直だわ」と感想を述べていた。牛窓の前島から大声を上げれば届きそうな小豆島だから身びいきかもしれない。いやいや田舎全体に身びいきなのかもしれない。