早川太鼓

 牛窓から久世町までは車でおよそ2時間半。もう少し行けば蒜山だから中国山地の麓と言ってもいい所だろう。県南の瀬戸内の町から西北の町までだからそれくらいはかかるだろう。訪れる度に、こんな北の小さな町で、コンサートホールを持ち自前の和太鼓のチームやオーケストラの楽団も持っていることに驚かされうらやましくなる。なぜかこの数年、早川太鼓のコンサートがことごとく僕が楽しみにしている他の和太鼓のチームのコンサートと重なり、早川太鼓の演奏を聴く機会がなかった。それこそ久しぶりのコンサートで楽しみにしていた。
 ちょうど入場開始時刻に着いたので、いい席があるのかどうか不安だった。ところが、1000人近く入れるだろう席に100人ちょっとくらいしか人がいなかった。僕の記憶ではかつて会場はほぼ埋まっていたように思うのだが、これではあまりにも寂しすぎる。演奏者もいまひとつのれないのではないかと思った。いつからこんなに観客が減ったのか僕には分からないが、とても寂しかった。
 多くのプロの太鼓を聴き続けているから、ついそうしたものと比較してしまいがちだが、なかなか素人でこのレベルに達するのは難しいと思う。ずう分上手で十分楽しむことができる。今回一緒に聴きに行ったベトナム人たちは初めての和太鼓だから、たいそう感激してくれて、身を乗り出して最後まで聴いていた。
 ひとつ自称和太鼓評論家の僕に言わせてもらえば、もっとソロの部分を増やしたほうがいいと思う。一糸乱れぬ演奏から一瞬ソロに移るのは、観客にとってはとてもスリリングで感動が増幅されやすい。演者の腕の見せどころが聴衆の感動を呼び起こさないはずがない。多くの力あるチームはそれをうまくとり入れている。スターが存在してもいいのだ。そのエースにつく客もいる。
 往復5時間をかけて訪ねても余りある感動をいただけた北の町の和太鼓演奏だった。